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『にわ』
『にわ』は1987~2010年にかけて自身も住んでいました家族の庭の写真です。
2004年12月に、庭の主のようにいた愛犬の死をきっかけに庭へ頻繁にカメラを携えて降りるようになりました。
その頃の庭は、幼き兄弟と相撲をとったり芝生に転げ回ったりしていた、家人の手入れも行き届いた庭とは変わり、家族が各々離れて暮らし、手入れも行き届かず、庭は雑草に覆われておりました。
その庭で僕は亡き彼の姿を追いながら、何かに反応してシャッターを切っておりました。
撮り続けていくうちに、カメラをとおして見る庭の写真は、様々な記憶や体験と結びつき、新たな視点を伝えてくれました。
元気だった頃の愛犬の視点、幼い頃の兄弟の視点、這いつくばって雑草をとっていた父の視点、大好きな花々の手入れをする母の視点、病床から眺めていた祖母の視点。名前を付け餌をやっていた鳥の視点。
しばらくして家族がまた集まり、庭に手入れも行き届きはじめたころ、この庭が人の手にわたることを知りました。
それからは、庭を撮るために家にいる日が多くなったようにおもえます。
家人は庭がなくなる日が決まってからも、庭に手を入れ続け、僕はそれまで以上に庭に降り、一つ一つにシャッターを切り続けました。
2010年春、庭に工事の手が入り、かつて庭のあった場所には新たな家族の家が建ち、幼き子供たちの声が響いております。
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